ここ名月荘は、いわゆる「旅館らしくない旅館」の草分け的存在です。3,000坪の敷地にわずか20室しかない客室は、1室1棟か2室1棟の平屋建て。別棟の談話室をはじめ、ゲストが客室以外で過ごせる場所がたくさん設けられています。まさにリゾートの装置です。
のんびり過ごすのが目的の滞在でしたが、バリ島のアマンダリにヒントを得て作ったといわれていたので、その共通点を見つけるという楽しみもありました。
装置としてはいくつか見つけたように思いますが、むしろアマンにはない「にっぽんの旅館」のすぐれた点が印象に残っています。季節感あふれる部屋のしつらいが目を楽しませてくれました。夜用と朝用に2枚用意された浴衣は人前でのたしなみという観念を思い出させてくれました。ゲストがどんな場面でどんなことを欲するかを見通した、さまざまな小道具にも脱帽です。
滞在中ずっと「舞台みたい」という言葉が頭を離れなかったので、紹介記事もつい観劇記のようになりました。また訪れたいと思ったのは、チェックアウト後に洗車された車を見たからではありません。到着から出発までのあらゆる場面で感じた居心地のよさが忘れられないからです。 |
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