Today's hotel |今日のホテル Volume.60
Released at 17 Aug. 2004

うつお荘
素材の香りまでも活かした摘草料理の宿
4年ほど前「danchu」で知って以来、ずっと気になっていた摘草料理の宿「うつお荘」。まだ見ぬ恋人のような深山の料理旅館を初めて訪れることができました。
旅館と言っても、実は料理民宿なのではないかという事前の印象を裏切る部屋や館内の質感もさることながら、期待をさらに上回ったのが料理です。
ご主人が毎日のように山から採ってくる山菜をはじめ、川魚、豆腐、蕎麦といった山の幸いっぱいの夕食と朝食は、いわゆる「高級食材」とは無縁ですが、素材の味ばかりか香りまで活かしきるような繊細な調理によって、優しい味が舌と体にしみわたってくれます。
テイストは全然違いますが、料理の水準は、夕食が信州の「旅館すぎもと」と、写真の朝食が北海道の「マッカリーナ」と同じくらいの高水準に感じられました。
うつお荘は、リーズナブルな価格の宿の中では、ひょっとしたら日本一の美食の宿かもしれません。
うつお荘
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基本情報
名称: うつお荘
所在地: 石川県石川郡河内村字内尾ロ35
TEL: 0761-92-1392
FAX: 不明
室数: 3室 (ただし宿泊は2組)
主な施設: 貸切温泉2 食事処
URL: なし
プロフィール: 金沢市から車で1時間ほどの白山麓にあるセイモアスキー場のすぐそばにある。1978年に40人規模の宿を始めたが、87年に現在の場所に移転。 これを機にご夫婦だけで好きなように運営したいと、1日2組しか泊めない宿に。季節によっては食事のみの利用も可能。スキーシーズンには蕎麦屋のみ営業。予約の取りにくい宿として有名。
泊まった部屋: 竜胆(りんどう) 2名利用1泊2食付 1名分 23,100円(税サ込み)
撮影時期: 2004年5月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

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玄関を入るとすぐに

うつお荘の玄関に足を踏み入れた途端、ピカピカに磨き上げられた廊下の右側に掲げられている「摘草料理」の額が目に入る。
木がふんだんに使われている内装の第一印象も良いが、それよりここはやっぱり料理の宿、そうした姿勢を真っ向から打ち出した額を見ると、夕食に対する期待感が早速高まってくる。
客室は正面の階段を上った2階にある。
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田舎家の雰囲気

最初に通された部屋は、囲炉裏の上に巨大な木の滑車で自在鈎(じざいかぎ)が吊るされ、片隅には古い箪笥、壁には大きな古時計ならぬ振り子時計がかかり、何十年も昔にタイムスリップしたかのよう。ここで迎え菓子をいただきながら、宿の説明を受ける。うつお荘のある「千丈温泉」は、金沢市から車で1時間もかからないのに、白山麓の完全な山の中。それだけに、こうした田舎家そのものの導入部は嬉しい。
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鮮やかな草の緑が開宴を告げる夕食

この宿だからこそ、夕食の紹介を急ごう。皿数も量も多いが、大食漢でない私でも心地よくお腹に納まってしまう摘草料理は、写真中央の餅草豆腐(餅草の葉をたたいて葛でまとめた品)の緑の鮮やかさを目で楽しむところから始まった。前菜として出された他の品は、奥が甘菜(あまな)とかたくり、手前がふきのとうみそ、いずれも山の香気がしっかりと残っている。食前酒には、地元加賀の銘酒「菊姫」のにごり酒が供された。
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黒胡麻の艶と香りが山の精こごみを覆う

前菜の後には、岩魚のお造りに皮の湯引きを添えたもの、自家製のひろうず(飛龍頭)と片葉(水ぶき)のお吸い物が出される。出汁は淡い。
その後、箸休め的に供された、見た目にも美しいこごみの黒胡麻あえは、黒胡麻のソースがこごみの淡い香りを活かしつつコクと旨みを添えている逸品。
料理は、絶品の岩魚の塩焼き、珍味3種(川えびの揚げ味噌漬、つくしの佃煮、豆腐の珍味)と続いていく。
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山うどの鮮烈な香りと湯葉の旨味

優しい味を楽しんでいるうちに、一転して鮮烈な香りの一品が供される。春の山菜の中でもっとも香りの強い天然の山うどと、旨味の濃い湯葉の小鍋仕立てである。見た目に美しいばかりでなく、味の方も夕食中の白眉と言えた。「菊姫」の冷酒と共に山うどの香りを鼻腔から吸い込んでいるうちに、しみじみと幸せな気分になってきた。料理は奥様の担当だが、ここでご主人の手打ち蕎麦が出てくる。これがまた旨い。
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定番の山菜天ぷらだが・・

スイバの穂、たらの芽、うどの芽、こごみ、もみじがさ、ごまなの天ぷらは、香りを楽しむもの。蕎麦まで平らげて一杯になりかけたのに、箸が進む。この後、炊き込み御飯が出されたが、2時間以上かけてサービスされる夕餉の刻は、ゆったりと心地よく流れていった。
量がいかにも多いようだが、驚いたことに翌朝にはちゃんとお腹が空いていた。
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ようやくご紹介、これが「うつお荘」

想像していたよりスタイリッシュな外観のうつお荘は、金沢セイモアスキー場のリフト乗り場のすぐ隣にある。宿を始めて20数年、当初村の施設を譲り受けて40人収容の旅館を営業していたが、87年今の場所に移ったのを機に、今の小規模な営業形態に変えた。
『昔は忙しいだけで何にも楽しくありませんでした。好きなことをやりたくて、こんな小さな宿にしたんです』とおっしゃる奥様。これからもずっと、好きなことをやってほしい。
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泊まれるのは1日2組

清潔でよく手入れされた客室は10畳の間に床の間と縁側からなり、2人なら十分な広さ。茶会も開くことを想定した炉と水屋が備えられていた。客室は3つあるが、宿泊客は1日2組しか取らない。 トイレは共同だが、洗浄機能付き。2つある貸し切り風呂で無色透明でとろりとした温泉が楽しめる。
宿泊が予約で一杯の場合でも、食事のみ(昼、夜)の利用が可能とのことなので、問い合わせてみてはいかが。
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正座して洗面!

客室の縁側の一方の端には、低い位置に設けられたこんな洗面台があった。当然、正座して手を洗い、正座のままかがみこんで顔を洗うことになる。初めての体験で、妙に非日常的でおもしろかった。
ごく薄い板を編んだ扉の向こうは押入れ。押し入れの上に位置する高い窓からは、スキー場のリフトの支柱がすぐ目の前に見えた。
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野の花が飾られた清楚な窓辺

床の間左側の窓辺に置かれた花瓶には、いつも山野でつんできた野の花が飾られているそうな。今日は、北陸の初夏を彩る「ヤマボウシ」の花が飾られていて、ハナミズキに似た白い花弁が美しい清楚な花が、窓の外の緑に映えていた。
部屋にTVがないおかげで、鳥のさえずりに誘われて、 ついうとうとしてしまうのも心地よい。
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朝食も絶品でした

食事は、1階にある広々した個室の食事処でいただく。清掃の行き届いた板の間が気持ちいい。ふと窓の外を眺めると、庭に咲くさまざまな野の花のまわりで、山の蝶が舞い、すがすがしい朝を感じさせる。
卓上に並べられた美味しそうな品々を見ると、食欲がよみがえってきた。早く食べたくなるのをぐっと我慢して、御飯や味噌汁が運ばれてくるのを待つ。
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ほんとうの贅沢とは・・

朝食の膳は、精米したての御飯、打ち豆とあざみの味噌汁、川鱒の吟醸粕漬けの焼き魚、温泉卵、根曲がり竹・うど・あざみ・わらびの煮物、ゴマナ、カブのぬか漬けに梅干と、トップの写真の通り、如何にも美味しそうで、健康にも良さそうなものばかり。
幸せに食べ進んでいたら、揚げたて熱々の豆腐が運ばれてきた。言葉に尽くせない美味しさ。本当の贅沢とは何だろうと考えさせられてしまう、華やかなフィナーレだった。
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From Editor | 編集後記
アテネ・オリンピックが始まり、寝不足の方も多いことでしょう。スポーツの試合は、筋書きのないドラマと言われますが、まさにその通りですね。 何が起こるかわからない・・だからつい、眠い目をこすりながらも、TVの前で大騒ぎしています。個人的には、女子サッカーと女子マラソンが楽しみでなんですが・・。

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