能登半島にある料理民宿として全国的に有名な「さんなみ」を初めて訪れました。
ここは、奥能登地方の伝統的な魚醤「いしり」や、地元の海の幸や自家栽培の米、野菜を使った料理がさまざまな媒体で紹介され、絶賛されている宿。期待はもちろん食事です。
高価な食材はほとんど登場しませんでしたし、お造りや焼き魚、野菜を使った料理などは、どれも素朴で美味しいのですが、正直、それほど特別のものとは感じませんでした。
ところが、海の幸を発酵させ、旨味を凝縮させた品々が出てくると、その印象が一変します。たとえば、イカを発酵させて作る自家製の「いしり」。 しょっつる、ニョクマム、ナンプラーなどの魚醤は、旨味は濃いがややクセのあるのが常識で、いしりについても同じことが言えるのですが、さんなみの「いしり」は柔らかな旨味だけが感じられ、クセも臭みもまったくありません。
このいしりを使った「いしり鍋」や「海餅(かいべ)」、さらには「なれずし」「ぬかさば」など、いずれも手間のかかった発酵食の美味しさは群を抜いていました。
米や野菜も、完全無農薬の自然栽培です。食材づくりに手間をかけること。そんな「さんなみ」のこだわりと魅力の源泉に迫ります。 |
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