Hotel Achives 通信
Today's hotel |今日のホテル Volume.73
Released at 23 Nov. 2004

べにや無何有
端正なインテリアと絶品の食事
べにや無何有は、室内にいながら外の自然と一体になれるような空間、木もれ日の柔らかな光が建物の中にいてもしみ込んでくるような空間で満ち満ちています。 たとえば、洋室の客室は、天井高いっぱいの大きな1枚ガラスの窓のおかげで、赤松やカエデが茂った庭に面した広いウッドデッキと連続しているかのように感じさせます。
ロビーや図書室(写真)などのパブリックスペースも、インテリアを最小限に抑え、外の緑と融合したようなくつろぎ空間が形成されています。 新館の客室に向かう渡り廊下は、屋根だけが付いた森の中のセミオープン空間になっていて、バリ島にあるアマンダリのヴィラに向かう「森に囲まれた村の中のような道」を想いださせます。
北陸という雪国ですから、熱帯のリゾートのようにはいきませんが、できる限り外と内の境界をあいまいにして、自然と人工が組み合わさった洗練されたリゾート空間を作り出す。 そのもくろみは、みごとに成功し、「何もしないでいること」に心地よさを感じる時間が提供されています。
椅子の座り心地、ベッドの寝心地、アメニティなども十分配慮されており、中でも、食事の水準が非常に高いことに感心させられました。 本格的なラグジュアリー・リゾートに滞在するつもりで訪ねても、ゲストを失望させることのない日本屈指の和のリゾートだと思います。
べにや無可有
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基本情報
名称: べにや無何有
所在地: 石川県加賀市山代温泉55-1-3
TEL: 0761-77-1340
FAX: 0761-76-1340
室数: 16室(全室露天風呂付き、和室8、洋室2、和洋室6)
主な施設: 図書室 食事処 男女別大浴場
URL: http://www.mukayu.com/
プロフィール: 1996年から徐々に改装、98年に新館、2001年に和洋室と図書室を完成した。建築家竹山聖氏の手によって、和と洋、自然と人工、内と外といった本来対角になるようなコンセプトを、あるものは融合し、あるものはその境界を曖昧にし、みごとに結実させた和のリゾート。
泊まった部屋: 洋室 2名利用1泊2食1名分金曜・休日料金 31,650円(税サ込み)
撮影時期: 2004年8月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

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意外だった外観
門も何もなく、透明のアクリル板にただ「無何有」と記された小さな看板に迎えられ、緑に囲まれた飛び石を伝って玄関へと向かう。 駐車場から見た「べにや無何有」の建物自体は、16室という規模から想像するよりずっと大きい。そもそも数年前まで、42室と5つの宴会場という規模で営業していたのだから無理もない。 宿の外観に少々驚かされたが、山代温泉の温泉街から離れた山腹にあるので、環境の良さは目立っている。
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すべてを見せない眺め
広々としたロビーの正面奥には、ごつごつした木肌のテーブルと座り心地の良い椅子が置かれ、ここでチェックイン。 正面の白い壁を長方形に切り取った窓から、みずみずしい緑が目に飛び込んでくる。余分な物を排した、自然との一体感を強調する簡素なインテリア。
箱根の名旅館「強羅花壇」と同じ建築家、竹山聖氏が設計した宿への期待感が高まる中、絞りたての美味しいりんごジュースが、乾いた喉をうるおしてくれた。
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無何有とは
無何有(むかゆう)という珍しい屋号は、中国古代の哲学者である荘子が特に好んだ言葉で、何もないこと、無為であることを意味するものだという。 竹山聖氏は、宿のHPに「からっぽだからこそ自由に満たされた時間」と記している。からっぽに近い広々としたロビーに、そのココロを見る思いがする。
ゆったりとしたソファーから、大きなガラス扉の向こう側のみずみずしい緑をボーっと眺めていると、頭の回転がみるみる遅くなり、都会の日常生活が遠ざかっていく。
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セミオープンの渡り廊下
ロビーのある本館から一旦外に出、セミオープンの渡り廊下を通って部屋に向かう。打ちっぱなしのコンクリートで作られた渡り廊下は、片側が森、片側が植え込み。 そして、廊下の向こうから自然の光が入ってくる、内であって外でもある空間である。
夏に訪れた今回は、緑の濃さと光から南国のリゾートを連想したが、春の花、秋のもみじ、冬の雪の頃には、一体どんな景色を見せてくれるのだろうか。
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部屋の中の階段
宿泊した洋室のドアを開けると、目の前にコンクリート打ちっぱなしの壁が特徴的な階段がある。上りきった踊り場が実質的な玄関で、冷蔵庫などが置かれ、水屋を兼ねている。 部屋は、そのさらに奥という一風変わった構造で、これも非日常性の演出か?
写真は、階段を上から撮影したもの。
渡り廊下に面したフロアには洋室宿泊者用の食事処があり、2組で1室を使う。和洋室と和室は部屋食。
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ミニマルなインテリア
ご覧の通り、打ちっぱなしのコンクリートの壁が目立つシンプルなインテリア。板張りの床が気持ちよく、白い上掛け布団と相まって清潔感がある。 1枚ガラスの大きな窓の外に広がる木々の緑と空の青が、モノトーンの室内と好対照。大きな視界が内と外との境界をあいまいにして、自然との一体感を強く感じさせる。
ベッドルーム自体は30平米ほど。その外側に6畳ほどもあるウッドデッキ(月見台)があり、昼寝用の寝椅子が置かれている。
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使い勝手を考慮してほしい家具の配置
滞在しているうちに気になったのが家具類の配置。外の景色に背を向けたソファの右手に、DVD&CDプレイヤー内蔵のフラットTVが置いてある。 景色を眺めたり、映画鑑賞するにはソファの位置がよくない。
ちなみに、無料の貸し出しソフトも100本ほどあるが、好きなクラシック音楽のソフトが少ないので、次回は持参しようと思った。
ヨーヨーマのCDを借りて、ウトウトしながら聞いていたが、静謐な空間にチェロの響きがぴったりだった。
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縦に細長いバスルーム
細長い形のバスルームは、洗浄機能付きトイレ、洗面所、シャワールーム、露天風呂の4つに分かれている。バスアメニティはモルトンブラウンの備え付けボトル。
ドアを開けると正面が洗面所で、とても狭いのが難点。コンクリートのシャワールームには、木製の桶と椅子まである。ここで体を清潔にしてから外の露天風呂に入るという機能的な配置になっている。
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こじんまりとした部屋付き露天風呂
四角く切り取られた空間のちょうど中央に真ん丸い湯船を配した露天風呂は、竹垣に囲まれ、周囲は板張り、底はタイルという構造。 庭は見えないが、竹垣越しに木々の梢と空を眺められる。無色透明の湯はややぬるめで、ゆっくりと入るのにちょうどよい。
部屋付きの風呂のほかに、サウナが付いた男女別の大浴場があり、石庭に面した木の浴槽の屋根付き露天風呂も楽しめる。
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ぜいたくな空間・・図書室
図書室の閲覧コーナーは、ここも大きな窓越しに見える外の景色と一体化したスペース。広い室内には、オットマンの付いた籐の椅子や、子供にちょうどよい小さな椅子が置かれ、大人のおもちゃ箱のような遊び心いっぱいの空間。 一方、奥の部屋は、ル・コルビジェの家具が置かれ、黒を基調とする色彩を抑えた空間で、緊張感のある雰囲気。計算された対比がおもしろい。 夜には、照明のマジックで閲覧コーナーがシックな感じに変わるのも良い。
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悦楽ものの蒸し鮑
食事処での夕食は、懐石料理。じゅん菜、鰻笹寿司、湯葉いくら、毛蟹、鱧くず仕立清汁、おつくり(ひらめ・甘海老・生雲丹)、目鯛木の芽焼という具合に供された。吸い物の出汁が絶妙。
そして、圧巻だったのが天然鮑新若布蒸しである。5〜6時間かけて蒸しあげた鮑は、とても柔らかく、芯まで味がしみこんでいて、鮑が持つ磯の香の風味が生よりもはるかに深くなっている。極上の煮貝にも、中華の干鮑にも通じる味で、今まで食べた鮑料理のうち、3本の指に入るほど美味だった。
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見た目にも美しい炊き合わせ
細長い大皿にのった加賀太胡瓜、茄子、蓮根、蛸、千石豆の野菜炊き合わせは、見た目にも美しく、さまざまな風味や食感が味わえて楽しい。特に、蛸が美味。
締めくくりには、通年メニューの合鴨つみれ鍋が登場する。具は、合鴨つみれ、水菜、焼葱のみで、「出汁が良いとシンプルなほど美味」の見本のような一品。 いっぱいになりかけたお腹だが、雑炊のお代わりも止められない。食事の水準は非常に高い。
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照明が作る夜のロビー
自然との一体感が強調された昼間と違い、夜のロビーは光と影の人工的な空間。インテリアの籐製品や、飾られた花にところどころ当てられている照明が視線のアクセントになっている。人も少なく、ほろ酔い加減でくつろぐには最高の場所である。
それにしても、パブリックスペースの利用者が少ない。ここに限ったことではないが、日本のリゾートや旅館が、露天風呂付きの部屋への「おこもり系」にどんどん傾斜していくのは、果たして良いことなのかと思う。
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見た目にはシンプルでも充実した朝食
絞りたてのグレープフルーツジュースが美味。温かい豆乳を湯豆腐にかけ、大豆の味を濃くして頂く工夫が良い。軽く1膳のお粥が出てそれからご飯というのが面白い。 卵料理が、出し巻、目玉焼き、ゆで卵から選択できるのもありがたい。漬物や佃煮など、ご飯の友がおいしい。
こうして、画竜点睛の朝食にも満足し、1人3万円の価格をリーズナブルに感じて、宿を後にすることができたのは、「べにや無何有」が良い宿である何よりの証拠だろう。
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From Editor | 編集後記
この頃、イマイチ集中力に欠けることが多く、忘れ物をして家に取りに戻ったり、買い物だけして用事のあった銀行に行くのを忘れて二度手間をかけたり・・。 我ながらあきれています。春先ならともかく、実りの秋といわれるこの季節にこんな状態になるのは初めてです。皆さんはいかがですか?こんな時は、どこかへ気分転換に行くのが一番。どこか面白いところがありましたら、ぜひお知らせください。

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