信州伊那谷の中央高速道路松川ICから、南アルプスに向かって山に分け入ること、50分。
ようやくたどりついた大鹿村にある「旅舎右馬允」は、旧家の母屋を活用した1日2組だけの宿です。1組は、2階の部屋に案内され、12畳+10畳+8畳の3間を独り占めします。
もう1組は、1階にある10畳+8畳の2間。これは、1人から6人まで一緒で、1泊2食13,000円(松茸の季節のみ時価)の料金は、何人で泊まっても、平日でも土曜日でも変わりません。
2階の中心にある12畳間の真ん中には、昔の門扉をそのまま活用した巨大なテーブルが鎮座しています。開け放った窓から見れば、外は緑一色。
さわやかな風が部屋の中まで吹き抜け、天気が良ければ部屋の中から標高3,120mの赤石岳が一望できます。まるで「田舎のおばあちゃんの家」に着いたような開放感に、長距離ドライブの疲れはあっという間に消えてしまいます。
この宿の最大の魅力は、田舎風ですが洗練された出汁が光るご主人の料理にあります。特に、5月の連休前後には、回りの山で採れる山菜の魅力が爆発します。
イワナのアラで出汁をとったタケノコの煮物は特筆もの。クルミの香りの五平餅や朝食の朴葉みそも、他ではちょっと味わえない旨さです。
温泉もなければ、水洗トイレもない。東京からも観光地からも遠い不便な宿ですが、のんびりして、おいしい料理をいただくにはここが一番という、私のお気に入りの宿を紹介します。 |
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