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Today's hotel |今日のホテル Volume.87
Released at 22 Mar. 2005

旅舎右馬允 (りょしゃうまのじょう)
1日2組限定の宿で味わう洗練された田舎料理
信州伊那谷の中央高速道路松川ICから、南アルプスに向かって山に分け入ること、50分。 ようやくたどりついた大鹿村にある「旅舎右馬允」は、旧家の母屋を活用した1日2組だけの宿です。1組は、2階の部屋に案内され、12畳+10畳+8畳の3間を独り占めします。 もう1組は、1階にある10畳+8畳の2間。これは、1人から6人まで一緒で、1泊2食13,000円(松茸の季節のみ時価)の料金は、何人で泊まっても、平日でも土曜日でも変わりません。
2階の中心にある12畳間の真ん中には、昔の門扉をそのまま活用した巨大なテーブルが鎮座しています。開け放った窓から見れば、外は緑一色。 さわやかな風が部屋の中まで吹き抜け、天気が良ければ部屋の中から標高3,120mの赤石岳が一望できます。まるで「田舎のおばあちゃんの家」に着いたような開放感に、長距離ドライブの疲れはあっという間に消えてしまいます。
この宿の最大の魅力は、田舎風ですが洗練された出汁が光るご主人の料理にあります。特に、5月の連休前後には、回りの山で採れる山菜の魅力が爆発します。 イワナのアラで出汁をとったタケノコの煮物は特筆もの。クルミの香りの五平餅や朝食の朴葉みそも、他ではちょっと味わえない旨さです。 温泉もなければ、水洗トイレもない。東京からも観光地からも遠い不便な宿ですが、のんびりして、おいしい料理をいただくにはここが一番という、私のお気に入りの宿を紹介します。
ル・パヴイロン・ホテル
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基本情報
名称: 旅舎右馬允 (りょしゃうまのじょう)
所在地: 長野県下伊那郡大鹿村大河原3080
TEL: 0265-39-2037
FAX: 0265-39-2133
室数: 5室
主な施設: 貸切浴室
URL: なし
プロフィール:

信州の山懐にいだかれた大鹿村で、20数年間家族経営している1日2組限定の宿。 車以外の交通アクセスは便数が少なく不便だが、JR飯田線伊那大島駅からバスで約1時間の終点大河原で下車、徒歩5分という方法も。 村人が演じることで有名な「大鹿歌舞伎」が5月と10月に開催される。

泊まった部屋: 2階(3室貸切)1泊2食1名 13,000円(税別)
撮影時期: 2002年08月&2003年05月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

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「おばあちゃんの家」の玄関
「旅舎右馬允」の文字が鮮やかな玄関先。春の連休明けに訪れたときには、ヤマボウシやつつじの花が大きなカメの中に豪快に生けられていた。
「右馬允」は、江戸時代に宿のご主人の祖先がいただいた官名をそのまま使ったもの。 旅舎として使われている母屋は、昔火事で焼けてしまったとのことで、大正時代のものだそうだが、さすが旧家という貫禄が感じられるどっしりした構えの家である。
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モミジの緑の中に浮かぶ白壁
この宿では、部屋から庭に出られる1階の客室も良いが、開放感抜群の2階の3部屋がなんと言っても特等席。幅の広い木の階段を上がると、まっ先に飛び込んでくるのが庭の緑である。 主役はモミジで、土蔵の白壁との対比が実に良い。この日は好天だったが、雨に濡れた緑の美しさもまた捨てがたい。土蔵の白壁がところどころ剥げているのも、却って「旧さ」と風情を感じる。 2階の部屋は、1組目の予約なら、かなりの確率でOKしてくれるはず。
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広い部屋でのんびり昼寝
部屋に案内されるとすぐに、やさしい奥様が手作りの和菓子を運んできてくれる。夏の終わりから秋にかけては、庭の栗の実で作った「栗かのこ」が登場することもある。
部屋の中に扇風機が登場する夏の真っ盛りも、標高の高い大鹿村は暑さ知らず。熱いお茶でお菓子をいただいた後は、庭の緑を眺めながら気持ちの良いお風呂(温泉ではない)でのんびりしたり、涼をとりながら昼寝を楽しむのが心地よい。
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野の花が簡素な空間に華やぎを与える
広い部屋は、簡素そのもので、小さなTVが1つ、それなりに充実している書籍類、あとは何もない。トイレは水洗ではなく、1階まで行かなければならない。 廊下の端にある「ブリキの流し台」の洗面所が、昔の田舎家そのものの雰囲気をかもし出している。
そんな中で、床の間に飾られた渋い掛け軸や、夏草の緑の中で映えるキキョウの紫が、素朴な部屋の空間に華やぎというアクセントを付けてくれる。
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2階の部屋から見える赤石岳の勇姿
南アルプスの主峰の1つ赤石岳の姿は、雲に隠れてそう簡単には見えないが、ラッキーな日には、すぐ近くに見える。 ただし、山は深く、泊まりがけの登山でなければ、近づくことはできない。
右馬允から細い山道をクルマで30分ほど登った夕立神パノラマ公園や、10分ほど徒歩で坂を下った小渋川にかかる橋のあたりが、南アルプスを望む絶景ポイント。
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山里の恵みがあふれる春の食卓
1階の食堂でいただく食事は、やはり門扉を活用した巨大なテーブルに並べられる。 ご主人が料理を担当し、洗練された出汁をベースに、伝統的な部分とソフィスティケイトされた部分が融合した魅力的な田舎料理を供する。
5月の連休前後は、山菜が食卓にずらりと並ぶ、1年の中でも稀な季節。左は定番の鯉のうま煮。 5月に訪れた特には、奥に並んだ3皿の山菜が放つ春の香りに心が躍った。イワナの刺身も美味。
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絶品の出汁が光るタケノコの煮付け
大鹿村のタケノコは、柔らかく、味も香りも良い。それでも、「何でこんなに美味しいのか」とビックリしたタケノコの煮付け。 その正体は、イワナのアラでとった出汁にあった。初めて訪れた時には、「無愛想な人だなあ」と思った位シャイなご主人が、「イワナの出汁でないと、こういう柔らかな味にはなりません。」と自慢げに語る逸品である。 やや甘めで、濃い田舎風の味付けが、力強い香りを持つ地のタケノコにピッタリで、大鉢に盛られた煮付けは、あっという間になくなった。
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定番の郷土料理「五平餅」
右馬允の食事は、春は山菜、夏は夏野菜中心、秋は松茸づくし(1泊2食3万円程度)と季節によって変わっていく。 地の松茸がこれでもかという位食べられる秋の食卓も、最後に出てくる「生松茸のお茶漬け」!の香味が忘れられない程、大満足だったが、個人的には、山菜の季節が最高だと思う。
クルミの香りが良い「五平餅」は、季節を問わず登場する。木曽では平べったいが、伊那に来ると写真のように丸くなる。部屋に持ち帰って夜食にするのも、おすすめ。
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緑が鮮やかな山菜のてんぷら
タラの芽、こごみ等7種の山菜のてんぷらに続いて、松茸シーズン以外はほぼ年間を通してメイン料理となる「きじ鍋」が供される。
ここまででも相当な量だが、最後に「そばを打ってみました」と言って、ご主人が手打ちそばを運んでくると、お腹が一杯なのに、まだまだ食べてしまう。 全体的には素朴な宿だが、ここの夕食は質量ともに「饗宴」そのものである。
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歴史を感じさせる古びた土蔵
庭の一角にあるもう1つの土蔵の手前には、タキギの山が積み上げられている。土蔵も、庭も自然に任せるまま、いつ来ても野の花が豊かである。 標高が高いせいか、夏でも蚊がほとんどいないのが良い。
この庭で時折コンサートを開くなど、イベントを通して大鹿村の村おこしにも貢献している。
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番傘が並ぶ白壁
母屋の白壁に飾られている番傘。荒れた部分も目立つ宿だが、いろいろな所にちょっとしたセンスが感じられる。
右馬允をふたりで運営しているご主人と奥様は、地元の方だが、共に都会生活の経験がある。 「田舎のおばあちゃんの家」のような旅舎が心地よく感じられる原因の1つには、都会人の感覚を理解した上で、田舎のサービスを提供しているご夫妻の感性が潜んでいるように思える。
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充実した朝食が滞在の締めくくり
朴葉みそが、どこにも負けないほどおいしい。これが右馬允の朝食の最大のポイントである。 地卵の卵焼き、イワナの一夜干し、きんぴら、納豆を詰めた厚揚げの焼き物、自家製のぬか漬け、雑穀ご飯、おみそ汁など「手のかかった朝食」は、どれも美味で地場産か自家製で、ボリュームもたっぷり。
だから、この宿に泊まったら、昼食はうんと軽くするつもりで、思いっきり朝ご飯をいただくのが私の習慣になっている。
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From Editor | 編集後記
日曜日、福岡で強い地震がありましたが、被害を受けた方にはお見舞い申し上げます。 新潟中越地震の記憶もまだ新しい今、ほとんど大地震に見舞われていなかったエリアで地震が起こったとなると、つくづく日本は地震国だと思わされます。 いざという時のために、日ごろから準備しておこうと改めて思いました。

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