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Today's hotel |今日のホテル Volume.103
Released at 26 July 2005

越後松之山温泉 凌雲閣
棚田の美を味わい、薬湯を楽しむ端正な宿
廊下が輝いている。これが凌雲閣の第一印象です。昭和13年に建てられた木造三階建ての本館の廊下は、まるで鏡面のように美しく磨き上げられていました。資産家だった初代の当主が高級旅館として建築した本館は、部屋の天井や欄間などにも凝った贅沢な建物で、端正な姿を今に伝えています。
この宿は、天水越、天水島、美人林といった美しい地名が並ぶ新潟県旧松之山町(現十日町市松之山)にあります。美しい棚田やブナ林に囲まれ、山菜やキノコに恵まれ、野鳥の宝庫でもある松之山は、日本の原風景を象徴するような眺めが広がる南越後の山村です。
そして、ここは地中に閉じこめられた1200万年前の海水がマグマの熱で温められ、日本三大薬湯の1つに数えられる効能の高い温泉となって湧出するという温泉地でもあります。
最近、棚田の美しさや豪雪に魅せられた人たちが次々に訪れるようになり、最近10年間で観光客数が2倍になったという隠れた名湯に興味をひかれていました。
実際に泊まってみると、塩辛くて、独特なにおいのする少し緑がかった温泉がすばらしく、料理長自ら山に入って採取し、保存するという山菜を中心とした料理も美味でした。また、温泉街から離れているため、とても静かで、素朴で温かいスタッフの対応にも好感が持てました。
廊下がきしんだり、本館のほとんどの部屋にトイレがないなど、昔ながらの宿特有の問題点も見受けられますが、松之山の美しい原風景を含めた好感度がきわめて高い宿だと思いました。
凌雲閣
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基本情報
名称: 越後松之山温泉 凌雲閣
所在地: 新潟県十日町市松之山天水越81
TEL: 025-596-2100
FAX: 025-596-2176
室数: 19室
主な施設: 男女別大浴場 貸切浴室
URL: http://www1.ocn.ne.jp/~rou/
プロフィール: 1939年開業。木造三階建ての本館に平成になってから増築した、トイレ・バス付きの新館に分かれている。松之山温泉は、有馬、草津と共に日本三大薬湯といわれている。日本秘湯を守る会。
泊まった部屋: 新館洋室 1泊2食 2名利用の1名分 18,900円(税サ込み)
撮影時期: 2005年06月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

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丘の上に立つ端正な木造建築
凌雲閣は、松之山温泉のほとんどの旅館が密集した温泉街から、車で3分ほどの国道沿いの小高い丘の上にある。
建てられてから70年近い木造三階建ての本館は、立派な屋根を持つ玄関に掲げられた「凌雲閣」の看板に象徴されるように、歴史を感じさせる端正な建物。
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磨き上げられた床が印象的な玄関
高級旅館として創業されたという宿の歴史にふさわしい立派な玄関ロビーが、宿のもてなしに対する期待感を高めてくれる。
歴史を感じさせる家具調度類もさることながら、ぴかぴかに磨き上げられた床が印象的で、館内ではくスリッパは不要なのではないかと思わせるほど。毎冬豪雪にみまわれる南越後の山間部で、宿を守るという気概が感じられた。
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玄関脇のラウンジでチェックイン
チェックインの手続きをしたラウンジの真ん中には、姿の良い柱がたっており、格子状になった天井や竹の梁が印象的な空間。
中央の柱が格子天井に届いた部分に放射状の装飾が施されるなど、空間を彩る細やかな装飾に、高級旅館の証が見てとれる。
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部屋ごとに異なる造りの本館和室
かなり早めにチェックインしたところ、「まだお客様がいらっしゃっていないので、ご自由にどうぞ。」と言われ、本館の和室を見せていただいた。
これは、2階にある松之間で、松をモチーフにしたふすま絵が描かれ、障子の桟や欄間が凝っている3間続きの部屋である。
3階には、凝った天井がしつらえられた部屋もある。部屋の造りや広さが異なるので、予約の際に問い合わせてみては。
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今回は、別館の洋室を選択
雰囲気があるのは本館ということはわかっていたが、今回はベッドに寝たいと考え、別館の洋室を選んでみた。
ご覧の通り、ペンションのような部屋だが、写真左手にバス・トイレが付いていて(本館は、1室を除き、部屋にトイレはない)、ベッドがあるため、昼寝に快適なスペースだった。洋室はこの1室のみで、別館にはこの他、広めの和洋室が2室ある。
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棚田が見渡せる部屋の窓
3階にある部屋の窓からは、国道沿いのガソリンスタンドなどが目に入ってしまうが、少し視線を上げると、道路の向こうにある棚田が正面に見える。電線が少々じゃまだが、棚田の緑が目に優しい。
網戸越しに、昼間は鳥のさえずりと蛙の声が入り交じり、夕方になると、虫の音と蛙の合唱が聞こえてきた。ただし、夜間は、虫が入らないよう、完全に窓を閉めた方が無難。
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効能の高さが肌で感じられる温泉
別館の1階に、時間によって男女交替となる2つの大浴場と、貸切家族風呂がある。露天風呂はない。
古代の海水が噴出したという塩辛くて、独特のにおいがする温泉は、少し湯の花が混じる緑がかった透明の湯。湯冷めしにくく、効能の高い温泉につかったなあという気分になれる温泉だと思った。なお、松之山温泉のにおいを「コールタール臭」と表現することもあるようだが、断じて嫌なにおいではない。
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日ごと時ごとに色を変える天水島の棚田
南越後の中でも、松之山の棚田は別格の美しさをもっている。特に、松之山温泉から、国道405号線を津南方面に向かって車で約5分、最初のトンネルの手前がすばらしいビューポイント。
遠く谷をはさんだ向こう側の斜面にも棚田が連なる風景の大きさや、杉林の濃い緑と棚田の淡い緑のコントラストが印象的で、「天水島」という美しい地名にふさわしい眺めだった。
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棚田を守る旅館関係者の努力
トンネルを越え、さらに2、3分走ると、右側に駐車場がある。そこに車を駐めて反対側の谷を見下ろすと、写真の棚田が目にとびこんでくる。こちらは、中央にある藁ぶきの小屋が可愛らしい箱庭のような風景。
耕作放棄されそうになった棚田の管理を松之山温泉の旅館関係者が引き受け、稲を栽培していると聞き、美しい原風景を守っていくことの大変さを感じた。棚田の撮影案内が宿にあるので、ぜひ訪れてほしい。
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山の幸が主役の夕食
大広間でいただく夕食の主役は、山菜をはじめとする山の幸である。ナラタケ入りの卵豆腐、越後名物の「のっぺ汁」、山ウドやあぶらこごみなどの山菜が並ぶ。素材の持つ味や香りを生かした料理は、歯ざわりや味付けのバラエティが楽しめた。
ただ、このあと運ばれてきたまぐろなどの刺身は余計で、せっかくの「山の膳」の雰囲気を壊す。この点については工夫してほしい。
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採れたての山菜はやはり格別
山菜やキノコは上手に貯蔵してあるため、年中いただくことができるが、採れたての山菜は味や香りの鮮烈さがまったく違う。
山菜のシーズンはほぼ終わっていたが、左奥に見えるアケビの芽だけは採れたてのもの。苦みと香りが格別で、山菜やキノコのシーズンには、さらに美味しいにちがいないと確信した。
ふきのとう、ねまがりたけ、もみじがさなどの天ぷらは平凡で、揚げ方に一工夫が必要。
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感動の味、イワナシのゼリー寄せ
岩場に自生し、実の味や形が梨に似ているのでイワナシという植物の、直径1センチもない小さな実を収穫し、1個1個皮をむき、焼酎の中に2年間漬けこむ。大変な手間のかかったイワナシのゼリー寄せが感動の味だった。
イワナシの実は甘みと香りと梨のようなシャリシャリ感をしっかり持ち、漬けこんだ焼酎を使ったゼリーともバランスがよく、繊細な一品。
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素朴な朝食
新潟の朝食、特に棚田のある山村でいただく朝食の主役は、おいしいご飯である。
そのご飯の味を生かすために並べられた脇役たちは、茄子の煮付け、温泉卵、コンブとねまがりたけの煮物、冷や奴、しらすおろし、サラダ、なめこの味噌汁といった品々。田舎風に濃い目の味で煮込まれた茄子をはじめ、ご飯と相性の良い味付けが意識されている。
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美人林という名のブナ林
松之山のもう1つの顔が、美人林という名前を持つブナ林である。杉林の一角に育てられたブナの人工林には、樹齢70年ほど、太さのほぼ均一なブナの樹が一面に並ぶ。
名前に恥じない端正な美しさを見せる一帯は、野鳥の宝庫でもある。地面に雪が残るブナの新緑の頃は、特に美しいという。
林の入り口にある青空市場で取れたての野菜を買ったり、すぐそばにある「森の学校キョロロ」を訪れ、自然観察会やホタルの鑑賞会に参加するのも面白いかも。
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From Editor | 編集後記
大型台風7号が上陸する前から大雨を降らせています。ところで、先日の東京での地震騒動。たまたま車で都心に出ていたので、鉄道のマヒに巻き込まれなかったのは、ほんとうにラッキーでした。 建物が倒壊したり、大規模な火災が発生したりといった、大地震で予想されるような被害はなかったのに、あれだけの大混乱。これを教訓に、もっとひどい状態になった時の備えをしておかなくては・・。非常階段を降りることを考えると、ホテルもあまり高層階に泊まらない方がいいのでしょうか。

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