廊下が輝いている。これが凌雲閣の第一印象です。昭和13年に建てられた木造三階建ての本館の廊下は、まるで鏡面のように美しく磨き上げられていました。資産家だった初代の当主が高級旅館として建築した本館は、部屋の天井や欄間などにも凝った贅沢な建物で、端正な姿を今に伝えています。
この宿は、天水越、天水島、美人林といった美しい地名が並ぶ新潟県旧松之山町(現十日町市松之山)にあります。美しい棚田やブナ林に囲まれ、山菜やキノコに恵まれ、野鳥の宝庫でもある松之山は、日本の原風景を象徴するような眺めが広がる南越後の山村です。
そして、ここは地中に閉じこめられた1200万年前の海水がマグマの熱で温められ、日本三大薬湯の1つに数えられる効能の高い温泉となって湧出するという温泉地でもあります。
最近、棚田の美しさや豪雪に魅せられた人たちが次々に訪れるようになり、最近10年間で観光客数が2倍になったという隠れた名湯に興味をひかれていました。
実際に泊まってみると、塩辛くて、独特なにおいのする少し緑がかった温泉がすばらしく、料理長自ら山に入って採取し、保存するという山菜を中心とした料理も美味でした。また、温泉街から離れているため、とても静かで、素朴で温かいスタッフの対応にも好感が持てました。
廊下がきしんだり、本館のほとんどの部屋にトイレがないなど、昔ながらの宿特有の問題点も見受けられますが、松之山の美しい原風景を含めた好感度がきわめて高い宿だと思いました。 |
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