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Today's hotel |今日のホテル Volume.109
Released at 13 Sep. 2005

三水館 (2)
人気の理由が納得できた、こだわりの温泉宿
発行人から話を聞き、ぜひ一度行ってみたいと思っていた信州鹿教湯温泉の三水館で、1室しかない蔵の客室に泊まってきました。
ほぼ100年前に建てられ、1階は座敷、2階は書庫として使われていた蔵を移築した部屋です。ほとんど手を入れずに再生したというだけあって、1階には昔の土間、建具、ふすまなどが使われていて、色あせたふすまを敢えてそのまま使用するなど、良い意味で古色蒼然とした雰囲気に包まれています。2階は、カーペット敷きの洋室に改造されていて、リビングルームとベッドルームに分かれた近代的なミニ・スイートになっています。
こうした本物へのこだわりは、地の野菜を中心とした、素朴なのに洗練された食事にも、強く感じられます。笑顔の絶えないスタッフと趣味の良い空間に囲まれて、穏やかな時間をすごせる旅館だと思いました。
さらに、私の大好きな「右馬允」のご主人と親交があることがわかり、「右馬允さんを手本に頑張っていますが、なかなか追いつけません。」と語る若主人の真意は聞きそびれましたが、どちらも本物を追求し、お互いを磨き合っていることは素晴らしいことだと感じました。
蔵でも1泊2食2万円あまり。本館で1万円台の価格は、きわめてリーズナブルです。平日でも1ヶ月以上前にほぼ満室になってしまう人気の理由が、よくわかりました。
三水館
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基本情報
名称: 信州鹿教湯温泉 三水館
所在地: 長野県小県郡丸子町西内1866-2
TEL: 0268-44-2731
FAX: 0268-44-2733
室数: 7室
主な施設: 露天風呂付き男女別大浴場 食事処 ラウンジ
URL: http://www.sansuikan.net/
プロフィール: 2001年、現在の場所に移転。古民家と蔵を活かし、木工作家井崎正治氏による統一的なデザインによって、伝統的なものと近代的なものが程よくミックスされた、木と土の質感が感じられる宿。
泊まった部屋: 蔵 1泊2食付き 2名利用1名分 23,250円(税サ込み)
撮影時期: 2005年08月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

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旧家の土間を生かした玄関ホール
民家の入り口のように狭いエントランスの奥は、2階まで吹き抜けになった土間。やや暗めの照明や、丸テーブルに薪ストーブ、土壁に木の柱が目立つレトロ空間である。小上がりの所には、いつ見ても整然と草履が並んでいた。
左奥が食事処の入り口で、2階には、吹き抜け空間を取り囲むように6つの客室が配されている。
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すばらしい木のテーブル
玄関ホール左側にラウンジがある。2列に並んだ巨大な木のテーブルがすばらしく、ガラス戸ごしに外の光がいっぱいに差し込む造りは、木の質感を生かしながらも現代的。玄関ホールとの対照の妙を感じた。
窓側のテーブルに添って並べられた鼓形の椅子が、何とも良い味わい。そして、ここは立派なオーディオとCDのコレクションが宿泊客をもてなす空間でもある。
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蔵の入り口
玄関ホール奥から母屋を出て、離れの蔵に向かう。階段を10段ほど登った小高いところにある。
玄関は、開きっぱなしの扉の内側に、分厚い木の扉と障子戸の二重扉になっていて、鍵も昔のまま。扉を開けるたびに、「よいしょ」という感じで力が入るのは不便といえば不便だが、蔵なのだから蔵らしい方がよいという哲学なのだろう
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建具に歴史あり
1階の和室は10畳と広め。床の間やその隣の飾り棚などは、シンプルだが品がよい。建具、ふすま、欄間などはすべて昔のもので、多少傷が付いているふすまを敢えてそのまま使っていることに風情が感じられた。
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雰囲気は昔風でも設備は今ドキ
左隅に見えるのは茶ダンス。隣の行李の中に、浴衣などが用意されていた。古さが全面に出ている部屋だが、エアコン、TV、シャワートイレ等が設置され、洗面所や水回りも近代的で、申し分ない使い勝手である。
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心和む野の花
蔵の入り口にある土間には、重厚な2段のタンスが置かれ、その上に生けられた野の花がアクセントを付けている。味わい深いインテリアに旧家の趣きが感じられる。
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和洋折衷のリビングルーム
急な階段を2階に上がると、リビングルームが現れる。モダンな感じの白木のテーブルと椅子に障子戸という、和洋折衷の部屋は明るさと温かみを感じる。
2階にはTVがなく、読書や語らいを楽しんでもらいたいというスペースづくりか。
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みごとな梁を生かした空間
元の蔵にはなかった天窓を設け、2階全体を明るくしている。自然のままにねじれた梁がめずらしく、屋根裏部屋の雰囲気を味わえた。
ベッドの足元には、大型のソファベッドがあり、寝転んで読書したりするのにちょうどよい。持参したCDラジカセで、好きな曲を聴いてみたが、音響がいいように思えた。
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スイート仕様
リビングとベッドルームの境には、壁に隠された引き戸があり、これを閉めることで、2室に分けることができる。蔵には最大6名まで泊まることが可能。
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のんびりできる温泉
大浴場は、午後8時に男女の入れ替えを行うので、その気になれば、表情の異なる2つの温泉を楽しむことができる。
こちらは、内湯が石造りの「柴石の湯」で、露天が木の浴槽の「すすきの湯」。その名の通り、露天のある庭には、すすきが植えられ、夏の終わりらしく穂が目立ちはじめていた。小さな宿なので、浴室はいつも人が少なく、のんびりできた。
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洗練された素朴さを感じる品々
夕食は食事処でと聞いていたが、蔵に泊まると特別なのか、個室に案内された。
前菜は一口ずつ6品だったが、甘辛酸のバランスが良く、特に酢の酸と内臓の苦味の関係が絶妙な「稚鮎の南蛮漬け」、梅酢の風味を生かした「ミョウガ寿司」が見事な出来だった。
ルッコラを巻いて食べる蓼科牛のカルパッチョは、ルッコラの持つ独特の香りが牛肉とからんで、組み合わせの妙を感じた。
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野菜たっぷりの満腹メニュー
つややかな餡の中にミョウガが潜む野菜の煮付けは、ジャガイモのホクホク感が抜群。この他、コーンスープ、千曲川の鮎の塩焼き、大盛り野菜サラダ、トマトとズッキーニのチーズグラタンなど、山盛りの野菜を中心とする体に良さそうな献立で満腹になった。
〆めに、鮎飯。とてもおいしかったが、ほんの少ししか食べられなかったのが残念でたまらない。最後に鮎飯が出ることを途中で教えてほしかった。
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井崎正治氏制作の人形
館内のあちこちに、三水館のデザインをアドバイスし、家具の制作もしたという、蒲郡市在住の木工作家井崎正治氏が作った人形が置かれている。
「祈り」や「感謝」のイメージを感じさせるこの人形は、庭に面したロビーの角に置かれていたもの。大ぶりな家具の重々しさを和らげ、空間に軽さと柔らか味を与える存在として、トータルデザインの中で欠かせない存在である。
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蔵の夜景
ラウンジで紫蘇のシャーベットをいただき、ほろ酔いかげんで蔵に戻る。昼間とはまたちがう姿に、階段下でしばし歩を止めた。 不要になったからと、捨ててしまったり、こわしてしまったりせずに、再生されて、また役に立っていることに感慨を覚えた。
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地味だが美味だった朝食
発行人が「日本人が長い間食べなれてきた朝食とは、こんな感じだったのかもしれない」と評した朝食には、確かに派手さはない。しかし、甘く味付けされた茄子の揚げ煮や、逆に甘さを控えた切り干し大根の煮付けの味は、見た目とは裏腹に奥深い。漬け物や梅干しにも手抜きがない。だから、ご飯がおいしい。
食後にラウンジでゆっくりとコーヒーをいただき、幸せな気分で宿を後にした。
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From Editor | 編集後記
先週の台風14号は、九州や四国・中国地方に大きな爪あとを残していきました。自然の猛威の前では、人間なんてひとたまりもないものだと、改めて感じさせられます。被災された方たちが少しでも早く日常生活にもどれることを祈っております。

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