「白雲なびく駿河台」と明治大学の校歌に歌われている東京御茶ノ水の駿河台は、昔は見晴らしの良い大地だったのでしょう。その高台にある「山の上ホテル」は、近くの明治大学がすっかり現代的な建物に変わってしまった今でも、昔のままの姿でたたずんでいます。文豪たちが数多く宿泊し、仏蘭西料理や天ぷらに舌鼓を打った名門ホテルは、新館こそできたものの、レトロな本館を建て替えることをせず、近代的なホテルが多い東京都心では、異色の存在といえます。
ホテル選びの際、施設が古いことに少し不安があったのですが、「文豪の愛した朝食」が食べられることにつられて泊まってみました。部屋こそ狭いものの、水回り・エアコンなどの使い勝手には特別不自由を感じませんでしたし、むしろ、旅館をほうふつとさせるようなおもてなしがあったりして、サービス面の工夫に感心させられました。
ロビーの備品には昔ながらのものが数多く使われており、古いけれど座りごこちのよい革張りのソファが置かれていたり、フロントに置かれたガラス瓶にレトロなマッチ箱が山積みされていたり、女性スタッフのユニフォームが昔のお仕着せ風だったり・・。歴史のあるホテルならではの特徴が、なお一層居心地よく感じられたのでしょう。さりげなくゲストの動きに気を配り、リクエストへの対応が的確なホテルスタッフの質の高さも、名門ホテルにふさわしいものでした。これからも変わってほしくない貴重なクラシックホテルだと思います。 |
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