「リターン指数5、とか言ってるけど、ホントにリターンしているワケ?」こんな疑問も聞こえてきそうですが、実はちゃんとリターンしているんです。そんな代表格がQ.E.D.CLUB。平成15年7月のランチに初めて伺ってから、先日の訪問まで合計すると既に4回+1。+1とは、お正月におせち料理を注文したからです。一昨年は近所の懐石料理屋さんから寿司おせちを注文したのですが、その案内より一足早く届いたQ.E.D.のおせちDM。限定数30の文字は、早く注文しろと私をせかせます。 そろそろふぐが食べたいなあと思っていた、ある冬の寒い日。我が家の郵便ポストにQ.E.D.からまたもやDMが。「あら皮」や「哥利歐」の風間グループや修善寺の「あさば」のようにここもDM呼び寄せ系なんだ、とよく読みもせずゴミ箱へ直行する間際、「ご招待」の文字が見えたような気が・・・。改めてしっかり読むと、ナントそこには、2名様以上の場合1名様無料でご招待と書かれているではないですか!そして、フレンチ、鉄板焼き、和食のうち和食はこれまたビックリ「ふぐコース」です。ランチとおせちしか利用していない私をどうして招待してくれるの?Q.E.D.。しかも、私のふぐ願望を見越していたかのような絶妙のタイミングで。当然、ご招待していただきました。 5月、私の誕生月。33にもなると、家族さえ忘れていました、見事に全員。そんなことさえ気にならなくなる33の私に、Q.E.D.からまたもDM。登録された人に機械的に配布してくる、所謂お誕生日おめでとうカードだなと、気も乗らないまま眺めていると、またも5月中、フレンチを1名様無料でご招待の文字が!大丈夫か?Q.E.D.。どうして、何度も無料なの?何年も贔屓にしている常連や多額の入会金を支払ったメンバーならともかく、ただのビジターだぞ。しかも前回一人分タダメシ食っているんだぞ!ここ、危ないんじゃないか?こんな大盤振る舞い。ランチのときは繁盛していたようだが、夜になるとさっぱりなのか? そんな失礼極まりない疑問を胸に、なぜだか最近忙しくて予約できない日々を過ごしていたら、またもやQ.E.D.からのDM。「蛍の夕べ」と題された案内状には、「6月の上旬、デザートタイムに照明を絞り、幻想的な光を放つ蛍をガラスケースに入れてお届けすると同時に、ガーデンにも蛍を放し、光の舞をお楽しみ頂けます」と書かれているのです。私、グッときました。蛍、見たことないんです。蛍が庭一面に舞い、目の前でも蛍が瞬いてくれる。ウッ、行きたい。めちゃめちゃ行きたいです。でも、これは当然一名無料ではありません。悩んだ挙句、5月も下旬に差し掛かっていたその日、Q.E.D.へ予約の電話を入れる私は(セコイ!)誕生日カードを利用しようと、5月中の希望日を告げると、どの日も満席だという。じゃあ、土日は?との問いに、土日はウエディングの予約で大分先まで埋まっているとのこと。儲かってるじゃん!結局、電話を入れた翌日しか空いていないので、予定を変更して急遽出かけることに。 「おせち」も「ふぐ」も非常に美味しく、満足度も高かったので、フレンチはたいしたことないよ、といういつも通り意地の悪い春絵は、タイトなシルエットのGUCCIの黒ワンピ。胸元のドロップ型アクセがQ.E.D.のほの暗い照明の中で輝いています。デザートまで一切手を抜かず、どの皿も少しの驚きとほころぶ笑顔まで与えてくれたことにQ.E.D.の凄さを感じていたら、ワゴンに10脚以上のコーヒーカップを携えて、にっこりと「お好きなカップをお選び下さい。」程よい酸味のコーヒーを口に含むと春絵は、シンプルなジノリをソーサーに戻しながら、「蛍も見に来ていいんじゃない。」 初めて蛍と会える!というのに、当日は残念ながら小雨。20時頃より蛍鑑賞と書かれていたから、2時間前の18時到着。ダイニングルームには、まだ誰もいません。ここのナイスなポイントは、前回もそうでしたが、ダイニングど真ん中の窓側に私たちを案内してくれること。どうしてこんな端っこに座らせるの?と思わず自分たちの服装をチェックしてしまうようなレストランには2度目はありません!「何かお飲み物を」と聞かれ、フレンチには似つかわしくないことを承知の上で、ふぐのときに頂き大変美味しかった特製梅酒を注文したのです。そのとき何で割ったか尋ねられたのですが思い出せないでいると、奥からギャルソンが自信満々の笑みを湛えながらやってきて、「マダムがシャンパンで割られたと記憶しておりました」と、止め処なく泡立つ琥珀色のグラスを静かに置いていきました。二人で同時に口に含み、私は春絵の瞳を見つめ、春絵はまだ日が沈みきらない雀色時の、よく手入れの行き届いた芝を目を細めながら眺め、二人同時に「これじゃないね。」 ほとんどお酒を飲まない私たちは、食事のペースがとっても早い。前回ほどの感激は薄れたとはいえ、十分満足のいくコースを締めくくるコーヒーは、マイセンで。春絵のダイヤで埋め尽くされたAUDEMARS PIGUETに目を凝らすと、19時30分。やばい、蛍の前に全部終わってしまった。「本日はあいにくの雨のため、お庭の蛍は中止になりましたが、ガラスケースに入れてテーブルにお持ちいたします」というギャルソンの声。振り向くと、隣のテーブルでは、いかにも楽しみにやってきました風のおそろいブレザーに身を包んだ小学生低学年の兄弟がふくれっ面、椅子の下でこちらもそろって足をブラブラさせています。私まで足をブラブラさせたくなる気持ちをグッと押さえて、「いいよね。間近で見られるから」といい終わらないうちに、「帰る?」という春絵。トンデモナイ!蛍は男のロマンだ!!と目ン玉が飛び出そうな顔をしていると、「この前、先生のとこ薬取りに行ったのね。久しぶりにグチでもこぼそうかと、診察お願いしますって受付に声かけたら、先生がいないって言うの。もちろん診療時間内よ。信じられる?病院に先生がいないの。先生もきっとビョーキね。あと、私、受付の子もそうじゃないかとニラんでるの。だって、目の前にあんなに薬が並んでるのよ。絶対飲みたくなるって。」 リアクションに困る私に、助け舟のように暗くなる照明。運ばれてくる手のひらサイズのガラスの容器。中には蛍3匹。「こうやって叩くと光ります」というギャルソンの教え通りに何度も叩く私。嬉しい。素直に嬉しい。青白い光を弱々しく、でも懸命に放つ蛍たち。なんて可愛いのだろう。「名前でも付ける気?」春絵の冷たい視線にシブシブ帰り支度する私。思い切り後ろ髪引かれてキャッシャーに向かう道すがら、神のようなギャルソンヌの一言。「蛍がたくさんいるお部屋があるのですが、ご覧になりますか?」 小学生のようなふくれっ面がみるみる笑顔に変貌し、飛び込んだ部屋はまさに真っ暗。でも、よーく目を凝らすと、10メートル以上はあろうかというガラスケースにびっしりの蛍たち。100匹は優に超えているでしょう。光っているだけでも。このガラスケースを少し叩いたら、その何倍ものになりそうな静かな気配。壮観です。この大都会に命はかない蛍の海。もう胸がいっぱいになったとき、ひとつの光がガラスケースを飛び越えて私の目の前を横切ったのです。さらにもうひとつの光も。そう、このガラスケースはフタがなく、彼らは自由にこの空間を飛びまわれるのです。子供のようにその光を追う口の開いた私。何かにぶつかりそうになって、目の前に先程の兄弟が蛍を追っているのを発見。後で聞いてみると、この部屋はカウンターから壁まですべて朱色の輪島塗で仕上げられたバーで、ガラス越しにライトアップされた噴水のある庭を眺められる瀟洒な空間とのこと。何回か来ていたのにその存在すら知らなかった。この時間に一番瞬くようにと昼間のうちから暗幕で覆い、売り上げを大いに伸ばせそうなこの空間を惜しげもなく蛍ルームにしてしまう。どこまでも奥深いQ.E.D.。そうとは知らず、薬の切れかけた春絵の鼻息と、いつまでも光を追い続ける年の離れた三兄弟。やっぱり、リターン指数は5です。 Q.E.D.CLUB 東京都目黒区中目黒1-1-29 TEL 03-3711-0006 (アクセス・JR、営団地下鉄恵比寿駅歩8分) http://www.qed.co.jp/index.html