神宮前 瞬のつぶやきコラム <レストラン編> Q.E.D.CLUB (2003/11/11 UP!) 平成15年7月 恵比寿駅からタクシーに乗り込み、裏通りをほぼ真っすぐに進んで、スピードが落ちてきたところで顔を上げると、窓の外にはお屋敷が。そして、ドアマンがタクシーに近づいてきます。「あっ、着いたんだ。お迎えまであるのか」なんてぼーっと思い、導かれるまま観音開きの大きな扉へ・・・。そこへ慌てたような「ちょっと!」という運転手の声。そう、私はお金を払わずにタクシーを降りようとしていたのです。ワタクシいつも運転手付きの生活を送っているわけではありません。しかし、とてもスムーズに誘導されたのでホテルのリモに乗っている気分だったのかもしれません。ここ、良さげです。 今日の私はグッチの黒のスーツ(3年ぐらい前のもの)に、青山で散歩の途中、ショーウインドウを覗き、急に欲しくなった襟の大きな白いシャツ。彼女は刺繍の施されたジャケットに白のパンツ。トレードマークのダイヤ付きサングラス。いつもこれ掛けてます。 名前を告げるとラウンジに通されました。ソファに座り、目の前には小雨がぱらつくしっとりとした芝生の庭。周りには白を基調としたヨーロッパ調の家具。振り向くとエントランスにはシンプルなオブジェが。広い空間を贅沢に使っています。都内のレストランにありがちなセセコマシイところが全くない!いいよ、いいよ。ここ、割といいんじゃない!何の情報も与えられずに、見知らぬラグジュアリー・ホテルにいきなりポンと通されたような、喜びと驚きとこのウキウキ感。そんな気持ちが伝染したのか彼女の口から「まあまあ、いいんじゃない」。これ、かなりの褒め言葉です。 和食を予約した私達は、フレンチのダイニングを横目に中庭へ通されます。ダイニングはランチの女王であるオバ様方で満員。その女王達が眺めるお庭をぐるりと廻って和食棟へ向かいます。案内の女性が差しかけてくれる大きな傘の下、飛び石の上を歩きます。各国の女王達はお庭を見るふりをして動く私達を目で追っているに違いない。背筋が伸びます。決して転んだり出来ません。その緊張感に嫌気が差したのか、ウチの女王様が「部屋の中を通って行けないのかしら」。詫びるスタッフ。ホントならお庭伝いに別棟へ向かうなんて優雅そうですが、ウチの女王様はちっともお気に召しません。 和食棟は個室のような作りで、真正面の眺めは、大きな窓枠で深緑の水彩画をズバッと切り取ったよう。ここ、いいです。聞いたところでは、夜はライトアップされて、また違った趣があるとのこと。梅酒を嗜みながら先付け、椀もの、煮物といただきますが、実に良い出汁が出ています。私、凝ったフランス料理も嫌いじゃないですが、蓮根や椎茸などそのままの素材にしっかりと味が染み込んでいる和食が一番好きなんです。焼き物、お造り、揚げ物も合格です。あー幸せ。おいしいものを食べているときって、心から幸せ。眺めもいいし、寛げるし。と、満足感に首まで浸ってしあわせタレ目状態の私に、彼女が一言、「駄目よ、ここ。だってほら隣のマンションが景色を台無しにしているじゃない」。あのー、女王様、ここ個室のように見えますが、板場と繋がっているドアがずっと開けっ放しですよね。いつも申しておりますが女王様のお声はホントに大きいですよね。電話している私の携帯から轟く女王様の美声に、近くにいた友人が思わず返事してしまった程に。 気を取り直して、ラストのお食事です。鮎飯に漬け物と赤だし。これもうまいじゃないですか!ご飯はお代わり自由です。こんなに食べてまだ入るのかと思うほど鮎飯が美味しい。開いているドアに向かって「お代わり!」。和食棟への案内から料理の給仕まで全てこなしてくださった、20代前半と思われる可愛い女性が笑顔でやってきます。その時珍しく彼女が「私も下さい」と言ったのです。おーそうか、やっぱり気に入ったのね。口では不平不満を言おうと気持ちは私と一緒。嬉しいよ。しかし、お代わりが運ばれてきても一向に口を付けない愛しの彼女。そして、私が食べ終わったとき、そっとお茶碗を差し出したのです。「まだ食べるだろうと思って」。なんて気の利く女王様なのだろう!いくら美味しくてもとんかつ屋のキャベツじゃあるまいし3回もお代わりは出来まい。それを見越してのこの言動。うーん、惚れ直したぞ。そこに、先ほどの女性がやってきて、「まだまだありますので、何回でもお代わりしてくださいと、板長が申しております」と変わらぬ笑顔で言われたのです。女王様も負けずに満面の笑顔でお断りしてから、「和食はお客が少ないのね」と聞こえよがし。先ほどの女王様の声は、やはり板長まで聞こえていたのかな? 今回の「Q.E.D.CLUB」、抜群に素晴らしいハードと気持ちの良いサービス、季節感溢れ十分に満足のいく料理。フレンチ・和食・鉄板焼きと3種類も食事を選べ、ラウンジでアフタヌーンティー、Barでカクテルを頂け、茶室・VIPルームまで完備したここは、まるでホテルの飲食部門だけを小さく切り抜いたような空間です。最高のおもてなしをする場所でありたいと、「これで、証明終わり。これ以上のものはない」という意味のラテン語の頭文字Q.E.D.を冠しただけのことはあると、私は思います。このレベルをいつも維持しているものなのか、もう一度この目でしかと見届けたい私は、リターン指数を満点の5と致します。最初から最後まで付きっ切りでサービスしてくれたあの可愛い女性、私が暑くて上着を脱いだらすかさず冷房の温度を下げてくれたのです。まあ、女王様が「寒いので冷房少し上げて下さい」の一言で、また戻すことになったのですが。 Q.E.D.CLUB 東京都目黒区中目黒1-1-29 TEL 03-3711-0006 (アクセス・JR、営団地下鉄恵比寿駅歩8分) http://www.qed.co.jp/index.html