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神宮前 瞬のつぶやきコラム

<レストラン編>

ザ・ウィンザーホテル洞爺VS六本木ヒルズ Part2 フレンチ対決

「Michel Bras TOYA Japon(ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン)」
vs 「L'ATELIER de Joel Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)」

(2003/12/09 UP!)

平成15年8月


前回の鮨対決の際にもチラッと登場してきましたが、やはりザ・ウィンザーホテル洞爺といえば「ミシェル・ブラス」でしょう。ホテルが発行する2003 Summer Issueに「自然から料理を創作する料理人と賞賛され、21世紀のフレンチの潮流をつくる天才料理人と世界が注目。(中略)ミシェル・ブラスの故郷であり、本拠地でもあるオーブラック山地・ライヨール村の壮大な自然を彷彿させる洞爺で生み出される新しい料理」と書かれていれば、ほーら、あなたも何だか食べたくなってきたでしょ。私も是非、そんな「ミシェル・ブラス」を食べたい!しかも当日は春絵の誕生日。春絵の厳しい目が光ります。

片や、六本木ヒルズの中で最もマスコミに取り上げられ、話題性抜群なのが「ジョエル・ロブション」。ロブション氏は、28歳で『コンコルド=ラファイエット・ホテル』総料理長に就任し、39歳でミシュランの三ツ星を史上最短記録で獲得するも、51歳で「完璧な味とサービスを求め、最高の状態で辞めたい」として『ジョエル・ロブション』を閉店してしまったという。そんな彼が出店したならば、やっぱり行かない訳にはいきません。そして、噂の内装は果たしてどんなものなのか・・・。

共に、ミシュラン三星シェフの名前が冠されたフレンチレストラン。皆様もこの一番を心より待ちわびていた?ことでしょう。でも、各々のコンセプトは全然違うのです。「ミシェル・ブラス」は堂々たるグランメゾン。対する「ジョエル・ロブション」はコンビビアリテ(懇親性)をテーマとしたシンプルフレンチ。だから、ハナから比較すること自体ナンセンスだとご批判が出そうですが、関係ありません。だって、私が書いてるんですから。で、食べているのが私と春絵ですから。

 「ミシェル・ブラス」では、25,000円のコース。「ジョエル・ロブション」では、6,000円と12,000円のコースしかないので、アラカルトで食べ放題に決定!ということで、ハッケヨーイ・・・のこった!

まずは、「ミシェル・ブラス」。予約時に「連れが誕生日のため、別注でホールのケーキではなく、デザートに何か特別なものを」とお願いしました。そして、「スタッフが輪になって、バースデイソングを歌うのはちょっと」と念のために。だって、あれはキッツイですよね。周りで見ていても、脇の下冷や汗モノなのに、あの中心にいることを思い浮かべると・・・。無理です。私には無理です。そして、当日。私は、DOLCE&GABBANAの黒いシャツに、黒いスーツ。同じくドルガバのバックルでかめベルト、光沢ダークバイオレットネクタイに、ものすごーくトンガッタ黒い靴。全身ドルガバで、ドルガバ店員仕様です。春絵は、YVES SAINT LAURANの黒のロングドレス。エステとプラセンタとビタミン点滴の賜物と言い張るデコルテを大きく出して、凶器のような○○キャラのダイヤの指輪をはめています。ギラッ!

初め、ウエイティングルームで食前酒とアミューズを頂きます。それから、ダイニングへ移動し、次々に目に舌に美味しい料理が運ばれてくるワケですが、今まで行ったグランメゾンと大きく違うのが、少しずつ散りばめられたサプライズです。テーブルの上にオブジェのように置かれたブラウンの板が実はパンのように食べられたり、食事の前にオーブラック地方に伝わるナイフの話をしたかと思うと、だから大切なナイフを最後まで1本で通して欲しいと、ナイフレストが用意されていたりするのです。また、銀の蓋がされた料理を、2人の黒服のギャルソンが、西太后に捧げるのかと思うほど高く、両手で顔の上まで持ち上げて運び、テーブルの直前で左右に分かれると、ピタッと立ち止まります。すると、別のギャルソンがさっと料理を取り上げ、テーブルの上に乗せると同時に銀の蓋をにこやかな笑顔と共にパッと開けるのです。二人分の料理をシンメトリーに。この一連の動作が各テーブルでリズミカルに行われ、まるでショーを見ているかのよう。

そして、デザート前のワゴンのチーズ。あまりチーズが得意ではない私は、いつも「少しだけ、ほんの少しだけ」と言い、切り分けられたブツを義務感のように喉に流し込んでいたのですが、ここでは、私達の土地(フランス)のチーズと北海道のチーズ、この二つをとても分かりやすい説明と共に食べ比べをさせてくれるのです。そして偶然にも、真っ暗で何も見えなかった大きな窓の向こうで、洞爺湖の花火大会がミシェル・ブラスの演出かのように静かに始まったのです。

でも、春絵はさっきからソワソワ。なんだコリャというケーキが出された、去年の修善寺「あさば」の記憶が蘇るのか、誕生日のことを一切口にしないギャルソン達に聞いてみろと私をせっつきます。仕方なく尋ねると、驚いたことにギャルソンヌは、突然の問いにも関わらず厨房に訊く事なく、笑顔で「ご用意させていただいております。私どもが何も申し上げなかったので、ご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません」と言ってきたのです。そして、デザート時に運ばれて来たのが、直径30センチはあろうかという球形の細かい飴細工のオブジェです。見事です。ブラボー!帰り際には、飴細工を前に微笑む二人の写真を、カードを添えたお土産のお菓子と共に、おめでとうございますのスタッフの声に見送られてレストランを後にしたのです。因みに飴細工やお土産は全てサービスでした。

さあ、大変だ。次は、こんなにも素晴らしい「ミシェル・ブラス」に対抗する「ジョエル・ロブション」の出番です。必ずやロブション氏は見事な土俵際上手投げを決めてくれるだろうと、大きな期待を胸に予約の電話を入れます。だが無残にも、「予約は受け付けていないので店の外に並んでくれ」と言われました。ランチだろうがディナーだろうが、夏だろうが冬だろうが、ふきっ晒しの店の外に並んでくれと言うのです。ウエイティング用の椅子も全員分はありません。「ラーメン屋じゃあるまいし」と春絵は財布だけ持って、自分の鞄と春絵のバーキンを両手に抱えた私を列に残し、ヒルズの洋服屋をチェックしに消えてしまいました。

ようやく中に入れてもらえ、周りをぐるりと見渡すと、「すきやばし次郎」を参考にしたというカウンター席にお客がびっしりです。ここにはカウンター席しかありません。鮨屋の板前とお客の距離感をフレンチに取り入れようという斬新なアイデアのもとデザインされた内装は、別にどうっていうほど驚きもない、どこかで見たことのあるようなデジャヴインテリア。ああ、それにしてもこの高い椅子、座りにくいなあ。隣の男性客が彼女に語るワインの薀蓄に、私が相槌を打ちそうになるほど狭い、肩寄せ合うフレンチです。トイレに立とうにも、そのまま後ろから誰かが椅子ごと引っ張り出してくれない限り出られない、高架下一杯飲み屋状態のフレンチです。 

そして、「すきやばし次郎」のカウンターサイズをきっちり再現したというそのカウンターは、付け台に鮨を乗せるのにはちょうど良くても、フレンチの大きなお皿をカウンター越しに置くには全くの不向き。だって、高い段差に加えて、実に奥行きが狭すぎるんです。置きにくそうなギャルソンの顔を見ているうちに、自分で皿を受け取ってしまいました。春絵は決して助けもしないから、私は2倍受け取ります。フレンチで、出された皿を自分で置くのです。それだけじゃありません。段差が高すぎてグラスのワインがなくなったことにギャルソンが気付かないのです。だって、向こうからは見えないのだから。業を煮やした春絵がワインを手酌しようと手を伸ばしたとき、やっとギャルソンは気が付きました。ここはそう、定食屋です。カウンターの後ろにはとても広いスペースがあります。そこにテーブルを出して食べたくなる気持ちを抑えて、デザート、コーヒーと無の心境で待ち続けます。

“シェフもお客様も気負わない、ほっとするような、温かなシンプル。(中略)お客さまが「今日のおすすめは何?」と気軽にシェフと会話を楽しむこともできる、まるで厨房の中で、食事をしているような究極なオープンキッチン”(Joel Robuchon official siteより)を目指したようですが、お手本が「すきやばし次郎」では当然のごとく漂う緊張感。まだぎこちなく、笑顔の少ないスタッフとシェフ。まあ、一つだけ感心したのは素晴らしく綺麗な厨房機器です。厨房の汚いレストランでは食べたくなくなりますが、ここはまだ新しいとはいえ、フルオーダーしたと思われる見せるためのデザイン厨房です。

肝心のお味は普通です。ホントは美味しかったのかもしれませんが、もう、そう感じられないような精神状態にまで追い詰められています。「キャビアをのせた卵、美食風」はお勧めです。でも、「本鮪のトロのミキュイ、香味仕立て」は、十分に脂の乗ったトロを炙り、こってりしたオリーブオイルをたっぷりと振りかけた一品で、「これこそ次郎を見習って、トロはそのまま食べたいわ」という春絵に大賛成です。

今回の軍配は、当然「ミシェル・ブラス」に上がります。リターン指数も、両手で思い切り広げたいほどの5と0です。ロブションの帰り、「私、いつもの倍飲まなきゃ、また犬が増えそうだわ」と言って、春絵は薬を口に放り込みました。でも、本当は3倍飲まなければならなかったようで、犬の飼えないマンションに住む春絵は、翌日極小ポメラニアンを購入し、やっぱり私の家へそのポメは送られる事となったのです。すみません!管理人さん、私のプロフィール書き換えて下さい。

ザ・ウィンザーホテル洞爺
北海道虻田郡虻田町字清水
TEL 0120-290-500
(アクセス・JR洞爺駅から送迎バスあり)
http://www.windsor-hotels.co.jp/index.html

六本木ヒルズ
東京都港区六本木6丁目
L'ATELIER de Joel Robuchon 03-5772-7500
(アクセス・営団地下鉄六本木駅)
http://www.roppongihills.com/jp/shops_restaurants/index.html
神宮前 瞬 (じんぐうまえ しゅん)
1971年生まれ。男。2匹のチワワと暮らしていましたが、最近ポメラニアンも
加わりました。 ネクタイを締めなくてよい仕事をしています。



ここは、ホテルやリゾートにあるライブラリーのように、気軽に読める文章をご紹介する別館です。旅に欠かせない「食」、旅先で見つけた「面白いもの」など、和める話題を提供していきます。ごゆっくりお寛ぎください。

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